歌ってみたのMIXを依頼しようとして、こんな言葉に手が止まったことはないでしょうか。
「2mixで送ってください」「instは各自でご用意ください」「パラでいただけますか?」「ドライ音源をお願いします」
どれも現場では当たり前に使われている言葉ですが、初めて依頼する人にとっては、そもそも何を指しているのかが分かりません。しかもやっかいなことに、これらの言葉は人によって微妙に意味がズレて使われています。「2mix」を「歌と伴奏を混ぜたもの」の意味で使う人もいれば、「ステレオ2chにまとめ終わった音源」全般を指す人もいます。ここを取り違えたまま送ってしまうと、やり取りが1往復増えて納品が数日遅れます。
この記事では、歌ってみたのMIXで登場する音源の呼び名を一覧表で整理し、そのうえで「依頼するとき、結局どれをどんな形式で送ればいいのか」を具体的に示します。3,000件以上のMIXをお預かりしてきた立場から、実際に多い勘違いも合わせて書きました。
細かい説明の前に、全体像を先に置きます。歌ってみた界隈で出てくる音源の呼び名は、おおむね次の6つです。
| 呼び名 | 中身 | 歌ってみたでの使われ方 |
|---|---|---|
| inst (インスト) | 歌が入っていない、伴奏だけの音源 | 楽曲の作者が配布しているもの。歌ってみたを録るときに流す音源はこれ。 |
| オフボーカル | instとほぼ同義。歌を抜いた状態の公式音源 | instと同じ意味で使われる。ボカロ曲では「off vocal」表記が多い。 |
| カラオケ音源 | カラオケ用に作られた伴奏、または声を除去した音源 | MIXには使わないほうがよい。公式instと音が違ったり、除去処理で音が濁ることがある。 |
| 2mix (ツーミックス) | 複数の音を左右2ch(ステレオ)にまとめ終えた状態の音源 | 文脈によって指すものが変わる。「歌+伴奏をまとめた完成形」を指す場合と、「ステレオ音源全般」を指す場合がある。 |
| パラ (パラデータ) | 楽器やパートごとに分かれた状態の音源。マルチトラックとも | 歌ってみたでは「歌をパートごとに分けたファイル群」の意味で使われることが多い。 |
| ドライ音源 | リバーブ等のエフェクトを一切かけていない、録ったままの音 | MIX依頼で送るのはこれ。エフェクト済みだと外せないため、加工前の状態が必要。 |
この表を見て「2mixだけ説明の毛色が違う」と感じたなら、正しい感覚です。ここが混乱の元なので、次で詳しく見ます。
検索で「2mix inst 違い」と調べる人がとても多いのですが、実はこの2つは比較すべき関係にありません。次元が違う言葉だからです。
instはinstrumental(インストゥルメンタル)の略で、「歌が入っていない、楽器だけの音楽」という中身についての言葉です。ファイルの形式やまとめ方については何も言っていません。
一方2mixは、音を最終的に左右2チャンネルにまとめ終えた状態を指します。制作の現場では、たくさんの楽器トラックを2chにまとめる作業を「ミックスダウン」と呼び、その成果物が2mixです。中身が伴奏だけなのか、歌が入っているのかは問いません。
つまり、「歌の入っていない2mix」も存在しますし、それは同時にinstでもあります。この2つは排他的ではなく、片方が中身、もう片方が形式を説明しているだけなのです。
実務では、次のような文脈で登場するからです。
この2つが同じ依頼要項に並ぶので、「2mix ⇔ inst」という対比だと誤読されやすいわけです。実際に並んでいる対比は「2mix ⇔ パラ」であって、instはまた別の話をしています。
依頼時に「2mixで」と言われて意味が取れなかったら、遠慮せず「歌のトラックは1本にまとめたものと、ハモリごとに分けたもの、どちらがよいですか?」と聞き返してください。プロ側からすれば、聞いてもらったほうが圧倒的に助かります。
ここからは実践編です。歌ってみたのMIXを依頼するとき、送るものは基本的に次の3点に集約されます。
| # | 送るもの | 形式・注意点 |
|---|---|---|
| ① | 歌のデータ(ドライ音源) | wav形式・24bit/48kHz(または44.1kHz)。リバーブ・ピッチ補正・コンプレッサーは一切かけない状態で。曲の頭(0秒)から書き出す。 |
| ② | 伴奏(inst/オフボーカル) | 配布されている公式音源をそのまま。歌と同じ長さ・同じ開始位置にすること。加工・カットしない。 |
| ③ | 参考音源・要望 | 「こういう雰囲気にしたい」という既存曲のURL、または本家歌ってみたのリンク。言葉だけより10倍伝わる。 |
いちばん多いトラブルがこれです。無音部分を節約しようとして歌い出しの直前からトリミングして書き出すと、伴奏と重ねたときにどこから始まるのかが分からなくなります。0.1秒ズレただけで歌はまったく合いません。
必ず曲の0秒地点から、最後までを1本のファイルとして書き出してください。前半が無音でもまったく問題ありません。むしろその無音があるから、位置合わせが一瞬で終わります。
メイン・ハモリ上・ハモリ下・囁き・セリフなど、役割が違うものは別ファイルにしてください。1本にまとめてしまうと、後から「ハモリだけもう少し下げたい」という調整ができなくなります。
ファイル名は01_メイン.wav02_ハモリ上.wavのように、数字+役割で付けると取り違えが起きません。詳しくはMIX依頼のファイル名の付け方で解説しています。
mp3は「聞こえにくい成分を捨てて容量を小さくする」形式です。捨てられた情報は元に戻せません。特に歌のデータがmp3だと、サ行の耳障りな成分を抑える処理(ディエッサー)や、音量を整える処理(コンプレッサー)のかかり方が不自然になります。
録音の設定を含めた準備の全体像は、MIX依頼時の音源の準備・書き出し設定にまとめています。
「歌ってみた 音源」で検索する人が多いように、伴奏をどこから入手するかは初心者がつまずくポイントです。公式に配布されているものを使うのが大原則で、探す場所はだいたい次の4つです。
| 入手先 | 特徴 |
|---|---|
| ピアプロ | ボカロ曲のオフボーカル配布で最もよく使われる場所。曲名で検索し、作者が上げているoff vocalを探す。利用条件は必ず作者の記載を確認すること。 |
| YouTube・ニコニコの概要欄 | 原曲動画の説明欄に、オフボーカルの配布リンクが書かれていることが非常に多い。まずここを見るのが早い。 |
| 作者の配布ページ | ギガファイル便、Google ドライブ、BOOTHなど。個人サイトに置かれている場合もある。 |
| 公式のインスト音源販売 | 商用曲やアーティスト楽曲では、カラオケ音源として販売されている場合がある。 |
「公式のオフボーカルが見つからないので、ボーカル除去ツールで歌を消しました」というご相談をよく受けます。気持ちは分かるのですが、MIXの品質という点では強くおすすめしません。理由は2つあります。
どうしても公式音源がない場合の選択肢や、除去ツールの限界については歌ってみたのオフボーカル音源はどこで手に入る?とオフボーカルを自分で作る方法で詳しく扱っています。
音源の入手先が分かっても、使ってよいかどうかは別の話です。多くのボカロ曲は歌ってみたでの利用を許可していますが、収益化の可否、クレジット表記の要否、二次配布の禁止など、条件は作者ごとに違います。必ず配布ページの記載を読んでください。歌ってみたと著作権の基本にまとめています。
実際にお預かりする中で、繰り返し起きているものを挙げます。どれも事前に知っていれば防げるものばかりです。
「良い感じにしてから送ったほうが親切だろう」と考えてリバーブやピッチ補正をかけた状態で送られてくることがありますが、これは逆効果です。かかったエフェクトは外せないので、MIX側でできる調整の幅が一気に狭くなります。録ったままの、素の状態が最も情報量が多いのです。
歌は歌い出しからトリミング、伴奏は前奏から、という状態だと重ねられません。両方とも0秒スタートで、同じ長さにしてください。
YouTubeの音声は圧縮されているうえ、配信用にラウドネス調整がかかっている場合があります。公式の配布ファイルを直接入手してください。
これは冒頭で説明したパターンです。歌と伴奏が1本に混ざったファイルからは、歌だけを取り出して処理することができません。MIXが成立しないので、必ず分けて送ってください。もし依頼要項の「2mix」の意味に自信がなければ、送る前に一言確認するのが最短です。
「どれが良いか選んでください」と10テイク送られてくることがありますが、選定は歌い手さんにしかできません。MIX側が良し悪しを判断できるのは音質だけで、どの表現を採用したいかは本人の意図だからです。使いたいテイクを決めてから送ってください。どうしても迷う箇所がある場合は、その部分だけ2案に絞って添えるのが現実的です。
送信ボタンを押す前に、次の項目を確認してください。ここが揃っていれば、やり取りの往復はほぼ発生しません。
依頼文の書き方そのものに迷う場合は、MIX依頼のテンプレートをそのままコピーしてお使いください。
この記事の要点を3行にすると、次のとおりです。
用語が分からないことは、依頼をためらう理由にはなりません。むしろ、分からないまま推測で送られるほうが困ります。YOUMIXでは、初めて依頼される方には何をどう用意すればよいかを一つずつご案内していますので、この記事の内容が完璧に理解できていなくても大丈夫です。
まずは自分の歌を客観的に把握したい方は、声の音域チェッカーやBPM・キー判定などの無料ツールもどうぞ。用語をもっと調べたい方は用語辞典もご覧ください。
あわせて読みたい:歌ってみたMIXの納期はどれくらい?依頼から公開までの逆算スケジュール
「自分の歌が下手だから依頼しづらい」と感じている場合は、歌が下手でもMIXで上手く聞こえる?直せること・直せないことの境界線 もあわせてご覧ください。MIXで直る種類のズレかどうかが分かります。
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