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歌ってみたの音量バランス|オケとボーカルの比率の目安と、耳で合わせる6ステップ

2026年8月28日 公開 ・ MIX/音作り
YOUMIX 運営者(MIXエンジニア/ボーカルディレクター)のアイコン 監修:YOUMIX ボーカルディレクター 東京・北池袋/歌ってみたMIX・ボーカルディレクション担当
DAWでオケとボーカルの音量バランスをフェーダーで調整しているイメージ

自分でMIXをしていて、いちばん最初に手が止まるのがここです。「オケとボーカル、どっちをどれくらいの音量にすればいいのか分からない」。

ボーカルを上げるとカラオケっぽくなる。下げるとオケに埋もれる。行ったり来たりしているうちに耳が慣れて、何が正しいのか分からなくなる——これは初心者だけの悩みではなく、経験者でも毎回やっていることです。

この記事では、まず数値としての目安をはっきり出します。そのうえで、数値だけでは決まらない理由と、耳で合わせるための具体的な6ステップを順番に説明します。最後に、よくある失敗と「音量を上げても埋もれる」ときの原因の切り分け方までまとめました。

この記事でわかること
・オケとボーカルの音量バランス、数値としての出発点
・耳で合わせる6ステップ(順番を間違えると崩れます)
・ジャンル別・曲の場所別の目安表
・よくある失敗5つと、その直し方
・「音量を上げても埋もれる」=音量以外の問題の見分け方

結論:出発点は「サビでボーカル -6dBFS、オケ -9〜-12dBFS」

先に数字を出します。これは正解ではなく、最初にフェーダーを置く位置です。

項目目安の値意味
ボーカルのピーク-6dBFS 前後サビのいちばん大きいところで、この辺に収まる
オケのピーク-9〜-12dBFS 前後ボーカルより3〜6dB下げた位置
2つを混ぜた合計-3dBFS 以下足し算で音量は上がるので、赤ランプが点かないこと
書き出し(配信向け)-14〜-9 LUFSYouTube・Spotifyの基準に合わせた範囲
トゥルーピーク-1dBTP 以下圧縮変換したときの歪みを防ぐ

dBFS(デシベル・フルスケール)は、デジタルで扱える最大音量を 0 として、そこからどれだけ下かを表す数字です。0を超えると音が割れます。マイナスの値なので、-6より-12のほうが小さい音、という読み方になります。

LUFS(ラウドネス)は、人の耳が感じる音の大きさを平均で表した数字です。ピークが同じでも、詰まっている曲とスカスカな曲では聞こえる大きさが違うため、この指標が使われます。詳しくは 配信で埋もれない音圧の話【-14 LUFSとラウドネスの基礎】 にまとめています。

なぜ「ボーカルのほうが3〜6dB上」なのか
歌ってみたは、リスナーが「歌」を聞きに来ています。原曲のミックスは楽器とボーカルが一体で設計されていますが、歌ってみたではボーカルが主役だと分かる位置まで持ち上げるのが基本です。ただし上げすぎると、オケから浮いて「カラオケ音源に声を貼り付けただけ」に聞こえます。この境目が3〜6dBのあたりにあります。

数値だけでは決まらない、たったひとつの理由

ここまで数字を出しておいて申し訳ないのですが、この数値をそのまま当てはめても、うまくいかないことがよくあります。理由はひとつです。

ダウンロードしてきたオフボーカル音源の音圧が、曲によってバラバラだからです。

同じ「-10dBFS」でも、すでに強く音圧を上げてあるオケと、余裕を残したオケでは、聞こえる大きさが2倍近く違います。前者に合わせてボーカルを置くと、ボーカルだけが痩せて聞こえます。

オケの状態見分け方やるべきこと
音圧が高い波形が四角い板のように見えるオケを -6dB 程度下げてから作業を始める
標準的波形に山と谷がはっきりあるそのまま目安どおりで進めてよい
音量が小さい波形が細く、ピークが-15dBより下オケを上げるのではなく、最後に全体で上げる

だから正しい手順は、「数値に合わせる」ではなく「数値の位置に一度置いてから、耳で動かす」です。次の6ステップがその手順になります。

なお、そもそもオフボーカル音源をどこから入手するかについては 歌ってみたのオフボーカル音源はどこで手に入る?2MIXとインスト(オフボーカル)の違い で解説しています。

耳で合わせる6ステップ

ステップ1:EQとコンプを先にかける(順番が最重要)

音量バランスは、いちばん最後ではなく「処理のあと」に決めます。これを逆にしている人が本当に多いです。

EQで低音を削ればボーカルは小さく聞こえます。コンプで音量の谷を持ち上げれば、ピークが同じでも大きく聞こえます。つまり処理をかけた瞬間に、それまで合わせたバランスは全部ずれます。

おすすめの順番
① ノイズ処理(エアコン・リップノイズ
② タイミング・ピッチ補正
③ EQ(不要な低音カット・こもりの整理)
④ コンプ(音量の谷を持ち上げる)
音量バランス ← ここ
⑥ リバーブ・ディレイ
⑦ 全体の音圧調整(マスタリング)

各工程の中身は 歌ってみたのMIXとは?依頼前に知っておきたい基礎 にまとめています。ノイズ処理は ノイズ除去の基本ブレス・リップノイズの処理 を参照してください。

ステップ2:サビを基準に合わせる(Aメロで合わせない)

音量バランスは、曲でいちばん情報量が多いところ=サビで決めます。

Aメロで気持ちよく聞こえる位置に合わせると、サビでオケの楽器が増えた瞬間にボーカルが消えます。逆にサビで合わせておけば、Aメロは多少ボーカルが大きくても不自然にはなりません。

曲の場所基準からの補正理由
Aメロ-1〜-2dBオケが薄いので、そのままだと大きすぎる
Bメロ±0dB基準のまま
サビ基準(ここで決める)いちばん埋もれやすい場所
ラスサビ+0.5〜1dB楽器がさらに増えるため
落ちサビ・アカペラ部-2〜-3dBオケが消えるので相対的に大きくなる

この補正は、フェーダーを部分的に書く(オートメーション)ことで行います。難しければ、まずはサビ基準のひとつの音量で通してしまって構いません。それでも十分聞ける状態にはなります。

ステップ3:小さい音量で確認する

これがいちばん効きます。大音量では、多少バランスが崩れていても脳が補正して「聞こえている」と判断してしまいます。

スピーカーやヘッドホンの音量を、会話が普通にできるくらいまで下げてください。その状態で歌詞が聞き取れるなら、バランスはほぼ合っています。聞き取れないなら、ボーカルが足りません。

耳が慣れる(リスニング・ファティーグ)について
同じ曲を30分も聞き続けると、耳は差が分からなくなります。15〜20分に一度、席を立って耳を休ませてください。戻ってきた瞬間の第一印象が、いちばんリスナーに近い判断です。長時間の大音量作業は聴力そのものにも負担がかかるので、音量は控えめにしてください。

ステップ4:スマホの内蔵スピーカーで聞く

歌ってみたを聞く人の多くは、スマホのスピーカーか、数千円のイヤホンで聞いています。制作用のヘッドホンだけで判断すると、この環境で崩れます。

再生環境起きることチェックすべき点
スマホ内蔵低音がほぼ出ないボーカルが浮きすぎていないか
安いイヤホン低音と高音が持ち上がるサ行が刺さっていないか
ノートPC中域だけが出る歌詞が聞き取れるか
制作用ヘッドホン全部聞こえるノイズ・不自然な処理がないか

3つ以上の環境で「歌詞が聞き取れる」なら合格です。すべての環境で完璧にするのは不可能なので、そこは狙わないでください。サ行が刺さる問題は サ行が刺さる(歯擦音)の抑え方 で扱っています。

ステップ5:モノラルで一度聞く

DAWのマスターにモノラル化のボタンがあれば、押して聞いてみてください。左右に散らしていた音が真ん中に集まるので、ボーカルとぶつかっている楽器がはっきり分かります。

モノラルで歌詞が聞き取れれば、ステレオでは確実に聞き取れます。逆にモノラルで埋もれるなら、それはステレオでも危ない状態です。SNSの動画や一部のスピーカーは、いまでもモノラルで再生されることがあります。

ステップ6:一晩おいて、翌日にもう一度聞く

地味ですが、これが最後の砦です。作業当日の耳は、必ずどこかに偏っています。

翌日に聞いて違和感がなければ完成です。違和感があったら、直すのは1箇所だけにしてください。あちこち触り始めると、また当日の耳に戻ってしまいます。

ジャンル別・音量バランスの目安

「ボーカルを立てる度合い」は、曲のジャンルによって変わります。あくまで傾向ですが、迷ったときの指針になります。

ジャンルボーカルの立て方ポイント
バラード強め(+5〜6dB)歌詞と表現が主役。息づかいまで聞かせる
ボカロ・高速曲やや強め(+4〜5dB)言葉数が多いので、埋もれると何も伝わらない
ロック・バンド控えめ(+2〜3dB)オケと一体で「バンドの中の声」に
アイドル系・EDM中間(+3〜4dB)音圧が高いオケが多いので、まずオケを下げる
アコースティック強め(+5dB)楽器数が少ないので自然に立つ
合唱・多人数コラボ個別に調整全員均一ではなく、パートごとに前後を作る

多人数の場合は音量だけで解決しません。大人数の歌ってみた(合唱・コラボ)のMIXコラボ企画の進め方 を参照してください。ジャンル別の音作りは ジャンル別MIXの考え方 にもまとめています。

よくある失敗5つ

失敗①:ノーマライズに任せている

DAWの「ノーマライズ」は、いちばん大きい一瞬を基準に全体を持ち上げるだけの機能です。ピークが揃っても、聞こえる大きさは揃いません。

ひとつだけ大きい「バンッ」という音が入っていると、そこが基準になって、それ以外が全部小さいままになります。音量バランスをノーマライズで決めるのは、ほぼ確実に失敗します。

失敗②:録音の時点で音量が足りない/割れている

MIXで直せない唯一の音量問題がこれです。録音時に小さすぎた声を持ち上げると、一緒にノイズも持ち上がります。逆に録音時に0dBを超えて割れた音は、あとから元に戻せません。

録音時のピークは-12〜-6dBFSを狙ってください。詳しくは 録音で音が割れる(クリップ)原因と対策歌ってみたの録音のやり方 にまとめています。

失敗③:ヘッドホンの音量が大きすぎる

大音量では低音と高音が強調されて聞こえる(等ラウドネス曲線)ため、その状態で合わせたバランスは、普通の音量で聞くと低音と高音が足りない音になります。ステップ3の小音量チェックが効くのはこのためです。

失敗④:オケを上げてバランスを取ろうとする

ボーカルが大きすぎると感じたとき、オケを上げるのではなくボーカルを下げてください。足していくと最終的に音が割れます。

MIXは「引き算」で進めるのが原則です。全体の音量が足りない分は、いちばん最後にまとめて上げます。

失敗⑤:音圧を上げてから音量バランスを直そうとする

マスターにリミッターやマキシマイザーを挿したあとにフェーダーを触ると、リミッターの効き方が変わるので、動かした量と結果が一致しません。音量バランスを直すときは、必ず仕上げの処理を一度オフにしてください。

「音量を上げても埋もれる」ときは、音量の問題ではありません

ボーカルを上げても輪郭が出ず、うるさくなるだけ——この状態になったら、それは音量ではなく別の原因です。切り分け表を用意しました。

症状本当の原因対処
上げるとうるさいが、下げると消える帯域のぶつかり(200〜500Hz)オケ側の中低域を少し削る
音は聞こえるが歌詞が分からない2〜4kHzの不足ボーカルの2〜4kHzを軽く持ち上げる
音量が上下して落ち着かないダイナミクスが広すぎるコンプで谷を持ち上げる
声が奥に引っ込んでいるリバーブのかけすぎリバーブを減らす/短くする
こもって前に出てこない低域の溜まり100Hz以下をカット
マイクが遠い録音録音そのもの録り直しが最短

それぞれの詳しい直し方は 歌ってみたで声が埋もれる・こもる原因と直し方 にまとめてあります。EQとリバーブの基本は リバーブの使い方ガイド を参照してください。

録音そのものの声量が足りない場合は、MIXでの持ち上げには限界があります。その線引きは 声量がない・小さいと言われる人へ で表にしています。

どこまで自分でやって、どこから任せるか

正直に線を引きます。音量バランスは、MIXの中でいちばん自分でやりやすい工程です。フェーダーを動かすだけで結果が変わるので、練習の効果も出やすいところです。

状況おすすめ理由
練習用・記録用に出す自分でやるこの記事の6ステップで十分聞ける
MIXを覚えたい自分でやるここが分かると他の工程も分かる
初投稿で、印象を大事にしたい依頼を検討1本目の音質は残り続ける
公開日が決まっている依頼を検討やり直しの時間が読めない
6ステップを試したが埋もれが直らない依頼を検討音量以外の原因の可能性が高い
合唱・多人数コラボ依頼を検討音量調整だけでは成立しない

費用の目安は 歌ってみたMIXの料金は7,000円から|明朗価格と内訳、無料でどこまでやれるかは 歌ってみたのMIXは無料でできる?、自分でやるか依頼するかの判断は 自分でMIXする?依頼する? にまとめています。

🎚 料金・依頼について見る(YOUMIX)

依頼する場合、音量バランスは自分で調整しないでください

ここは誤解が多いところなので、はっきり書きます。

MIXを依頼するときは、音量を調整したデータではなく、録音したままのデータ(ドライ音源)を送ってください。

理由は、音量バランスがEQやコンプと一体で決まるものだからです。先に音量を触ったデータを渡されると、こちらはそれを一度元に戻す作業から始めることになり、その過程で音質が落ちます。

送るもの正しい状態
ボーカルエフェクト・音量調整なし・24bit / 48kHz の WAV
ハモリ・コーラスパートごとに別ファイル
オケダウンロードしたそのまま(トリミングしない)
頭出し全ファイルを同じ位置(0秒)から書き出す

ファイルの準備は MIX依頼前の下準備チェックリスト、命名ルールは MIX依頼のファイル名の付け方、渡し方は 音源ファイルの渡し方 を参照してください。依頼文の書き方は MIX依頼の文例テンプレート にそのまま使える形で置いてあります。

よくある質問

Q. オケとボーカルの音量は何dB差が正解ですか?

A. 固定の正解値はありません。出発点としては、サビでボーカルのピークが-6dBFS前後、オケが-9〜-12dBFS前後、差でいうと3〜6dBボーカルが上、という位置が扱いやすいです。ただしオケの音圧は音源によって大きく違うため、この数値は「最初に置く位置」であって、最後は必ず耳で決めます。

Q. 音量バランスはどのタイミングで決めればいいですか?

A. EQとコンプをかけたあとです。処理の前に決めたバランスは、処理をかけた瞬間に崩れます。ステップ1の順番表のとおりに進めてください。

Q. 書き出しは何LUFSにすればいいですか?

A. -14〜-9 LUFS の範囲に収めておけば大きく外しません。YouTubeやSpotifyは-14 LUFS前後で音量を揃えるため、それ以上に上げても再生時に下げられるだけです。トゥルーピークは-1dBTP以下にしてください。

Q. ヘッドホンで合わせたバランスが、スマホで変わってしまいます。

A. 正常な現象です。スマホのスピーカーは低音がほとんど出ないため、低音に隠れていたボーカルが相対的に大きく聞こえます。ステップ3(小音量)とステップ4(スマホ確認)を必ず入れてください。

Q. 音量バランスだけ自分でやって、あとを任せられますか?

A. できますが、おすすめしません。加工していない録音データをそのまま渡すほうが、結果的に良い仕上がりになります。理由は前の章のとおりです。

Q. 何回やってもうまくいきません。センスの問題でしょうか。

A. 違います。ほぼ全員が最初はうまくいきません。音量バランスは耳の記憶が育つほど早くなる作業で、5曲もやれば感覚がつかめてきます。それまでは、この記事の数値をそのまま使って構いません。MIXでどこまで変わるかは 歌が下手でもMIXで上手く聞こえる? で境界線を整理しています。

まとめ

YOUMIXでは、「自分で6ステップまでやってみたけど、ここだけどうしても納得できない」というご相談も歓迎しています。依頼前提でなくて構いません。東京・北池袋のスタジオでの録音からのご相談も承っています。

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